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Charming Photo Story
どうして誰もいないんだろう。
この公園の径にはいつも小さな子を連れた人や、犬を散歩する人がいて誰もいないなんてことはなかったのに。この径に人の姿が見えないだけじゃない。周りからも誰の声も聞こえてこない。蝉の声だけが、降るように大きく鳴り響いていて、木漏れ日が差し込んでいた。。そういえば、車の音もしていない。すぐそばを幹線道路が走っているはずなのに。
怖くなって引き返そうと思った。でも、どこへ?
自分がどこから来たのか思い出せなかった。なぜここにいるのか。自分が誰なのか、それさえも。
途方に暮れた時、ふっと黄色いものを見た気がした。ハッとして目を凝らすと、死んだように誰もいない径の先に、犬がいた。明るい色の、巻き尾の犬。その犬は遠くからこちらを見つめ、可愛い尻尾を振って私を呼んでいるみたいに見えた。
私は踏み出してその犬に向かって歩いて行った。その犬に近づいて行くにつれて思い出されてきた。私は知っていた。その犬の名前を。そして、私の名前も。
待っていてくれたんだね。
あの頃のように、私が頭を撫でると、犬は幸せそうに目を細めていた。
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